生食牡蠣取扱基準

~生産地・生産者の選び方~


OJ生食基準

食品衛生法の生食基準とOJ生食基準は異なる。

元来の食品衛生法に検査頻度と腸炎ビブリオ・ノロウィルス・加工水の検査を追加したものが、OJ生食基準である。

ノロウィルスについて

<陰性・陽性の見直し>

現在ノロウィルスの検出感度は10~100個程度であり、それ以下の数値は正確に出ない。10個以下が陰性とされているが、信用できる値ではないことが分かる。また10個程度の摂取で感染することが分かっている。そのため、陰性という表記でも、ノロウィルスが検出された時点で、生食としての扱いは中止するべきである。

そのため、「検出されず」を生食基準とした。

 

また、中腸線検査は検査員の摘出技術によって結果が大幅に左右される。そのため自社検査ではなく、熟練した検査員が在籍する外部機関による検査が望ましい。

検査頻度について

現在、市場で扱われている生食用牡蠣の検査頻度は、各市場によって異なり、不明確である。そのために明確な検査頻度を提示した。実際に仕入れを起こすときは、月2回の検査でも「絶対安全」とは言えないため、前期間のデータを調べることを推奨。過去データでノロウィルスが検出された場合は生食取引を控えること推奨する。

過去にノロウィルスが検出されている海域では、雨が降った時や、川の上流でノロウィルスの集団感染が起きたときなどは要注意である。また、過去から検出がない地域でも、地形の変化や海洋工事で海流が変わった場合、流れ込む川の上流に市街地ができた場合も気を付ける必要がある。



ノロウィルス

小さい

ノロウィルスはちいさい。大腸菌やブドウ球菌の1/30程度の大きさ。

・手に付くと、しわや指紋、爪の間に入り込み、洗ってもで落ちにくい

・二枚貝に取り込まれると、中腸線の奥まで侵入して、排出されるまで長時間かかる

・乾燥して舞い上がり、細かいホコリのように長時間空気中に浮遊する

滅菌水で浄化すれば取れると勘違いしている方も多いが、24時間や48時間程度の浄化では取り除くことができない。

不活化条件(ネコカリシウィルス等で実験)

・酸に強いので、胃を通過する(白ワインや酢では絶対に防げない)

・アルコール消毒液が効きにくい(ほぼ効かない)

・60℃で30分加熱しても感染力がある

・乾燥や寒さに強く、冷凍しても不活化しない、室温では20日以上感染力を持つ

以上のことから1度持ち込まれたノロウィルスを排除したり不活化するのは難しい。第一は持ち込まないことである。

培養できないので、実験が進みにくい

ノロウィルスは人とチンパンジーの小腸の中でだけ、増殖することができる(牡蠣や川、海で増殖することはない)。

培養でウィルスが活性なのか不活性なのかを調べることもできないのも現状である。現在はPCR法という遺伝子検査でノロウィルスが存在するかどうかを調べることはできるが、精度は100個程度までである。対して人が感染するのは10個程度の経口摂取。

店舗での取り扱いについて


提供者の検査

ノロウィルスは人から人へと感染することも多い。体調不良がなくともノロウィルスを保持している「不顕性感染」が約4割というデータもある。感染者が調理・配膳する場合、手洗いや手袋では全く防ぐことができない。一般的な認識として、「ノロウィルス=牡蠣」がある限り、他の場所での感染でも牡蠣取扱店舗が疑われる。提供店舗は、可能な限りの努力をすべきである。

・体調不良者は店舗に近づくことをさせない

・ノロウィルスが蔓延する時期(11月~3月)には月に1度の検査をすること

 

<知らないうちに、感染源となってしまう不顕性感染>

感染しても症状がでない場合があり、これを不顕性感染という。本人は自覚がないまま、ウィルスを排出して食品を汚染してしまうと、集団食中毒が発生してしまう。不顕性感染者のあぶり出しをするためにも、人の検査をすることが重要である。

手洗いについて

普通の手洗いでは「10秒間もみ洗いをしたのち15秒すすぐ」とされているが、これではウィルスを100分の1にしか減らすことができない。手につくウィルスの数は100万個程度が想定される。1度の手洗いでは1万個のウィルスが残ることになる。2度の手洗いでは100個程度まで減らすことができるので、その後、手袋を着用して食品に触れるのがよい。

 

手荒れを防ぐため、ビニール手袋をしたのちに200ppmt程度の次亜塩素酸ナトリウムに浸し殺菌をする方法もある。

次亜塩素酸ナトリウムの使い方

市販の塩素系漂白剤が次亜塩素酸ナトリウムである。カンタンに1%が10000ppmと覚えておくとよい。多くのものが6%の次亜塩素酸ナトリウムであるので原液が60000ppm、10倍に薄めると6000ppm、100倍に薄めて600ppmである。

使用する場合は、汚れを完全に拭取り、その後に次亜水を作用させる。すぐには効かないので1分~30分作用させる。

・ふん便、吐しゃ物の処理:1000~5000ppm

・日常清掃(ドアノブ・便座・タオルの漂白):200ppm

 

次亜塩素酸ナトリウムは光で分解されるので遮光性のある容器で保存しなければならない。室温で遮光せずに置いた場合、2か月も経たないうちに半分くらいの濃度になってしまう。

 

トイレについて

<レイアウトと設備>

ノロウィルスはふん便から排出される。その数1gで1億個~100億個。これを拡散させないことが大切である。ドアノブ・蛇口には必ず付着するといってよい。手洗い後にドアノブを触ることを防ぐために、手洗い場はトイレの外に配置し、お湯が出るようにする(もみ洗い10秒すすぎ15秒)。冷水だとどうしても手を洗う時間が短くなる。従業員用のトイレを不特定多数の人が使用する客用トイレは分けることが望ましい。

ペーパータオルは下から引き出せるタイプのものにする。

<掃除について>

汚れを清掃したのちに、200~600ppmの次亜塩素酸ナトリウムをスプレーして3分作用させて殺菌をしたのちに拭取りをする。清掃者は、必ず手袋をし、清掃後に帰宅するなど、清掃後に食品に触れない者とする。